事故の状況によっては、偶然に起きたものなのに、損保側からとんでもない難くせをつけられることがあります。「故意に事故を起こして、保険金詐欺をたくらんだんじゃないか。これは偽装である」と。こんな言われ方をされますと、被害者は怒りで震えます。車両保険の場合、かつては事故が「偶然」に起きたことを被害者側で立証しなければならないとされていました。しかし最高裁は、二〇〇六年六月一日の判決以降、いくつかの判例でこの見解を逆転させました。損保側か、「事故は被害者が保険金目当てに故意に起こしたものだ」と言いたければ、そのことを損保側で立証しなければならないとしました。これによって被害者は、駐車場にあった車がなくなったとか、水没したという外形的事実だけを証明すればよいことになりました。こうして、最高裁は被害者の立証責任の軽減をはかったのです。しかし最高裁がこの判例を確立するまでは、「偶然性」の立証責任が被害者側にあるとされていましたから、被害者は本当にたいへんでした。車両保険金を払いたくない損保としては、どこかに因縁をつけられそうな事実はないかと血眼になって探しました。それがみつかると、「偶然性が疑わしい。被害者は、当時金に困っていた。保険金目当てに事故を偽装したのだ」と決めつけました。悔しかったら「偶然性」を証明せよ、と開き直ったのです。
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