再び東ヘ一路、釧路をめざし始めた。十弗川を渡ると、車窓にはまさに北海道らしい情景が展開し始めた。広大な雪景の中を、カラマツが一直線に彼方まで続いている。絵葉書的といえば、それで終わりだが本州では目にできない、当地ならではの風景である。十弗、豊頃と停車するが、乗降客はゼロ。新吉野では1人下車していったが、乗車する客はいなかった。池田ですでに、大半の乗客が降りてしまっているため、車内は寂しいほど静かだ。救いは件の小学生3人組。彼らの話す声だけが、がらんとした車内に聞こえている。これで彼らも降りてしまったら、たちまち旅愁に襲われることだろう。とはいえ、まさかこのまま釧路までいくとは考えられない。もうそろそろ降りるのではと思っていたら案の定、浦幌で彼らは他の乗客だちとともに下車していった。そして気がつけば、2両目の乗客はまたしても私を含めて3人。哀愁漂う道東ドン行の旅になってしまった。駅のホームに立てられた木造の小さな詰所も板で窓が塞がれているのも、何とも佗しい光景だ。
スイスの「眺め」を楽しむのに一番お薦めなのが、山の頂上にある山岳ホテルと麓のマウンテンリゾートだ。ベルクホテルとも呼ばれる山岳ホテルは、登山列車で行く山の終点近くにあり、間近に迫るアルプスの険しい峰々や氷丿可の眺めが最大の魅力だ。例えば、アルプスの雄大な眺めを満喫できる中央スイスのリギ山の頂上にあるホテルは、1816年のオープンで180年以上の歴史がある。山の頂上にあるだけに、トイレ、シャワーとも共同という所もあるが、素朴でウッディな感覚を生かした館内は、いかにも「山の宿」らしい雰囲気が漂っている。交通の発達で、せっかくの眺めを見ながらすぐ帰る人が増えてきたので、飛び込みでも入れるのがありがたい。こうした山岳ホテルに泊まったら、やはり早朝、そして夕焼けに客室から見る山の眺めは格別だ。このほか、スイスには、山麓の登山町や湖畔にも世界的に知られた素晴らしい「眺望」のマウンテンリゾートが沢山ある。観光国家であるスイスは、ホテルマンのレベルも高く、山々の「眺め」を見事なサービスのひとつにしているのだ。
私は安宿ばかり泊まり歩いている。最大の理由は当然安いこと。しかし、いま思えば、安宿だからこそケットできた小さなおトクがたくさんあった。そんなおトクをもたらしてくれたのは、宿のスタッフやオーナー達。小さな安宿だからこそ、3日もいれば彼らと即席トモダチになれる。そしてトモダチは、なにかとよくしてくれるものなのだ。特に日本人女性にはね。とあるビーチの安バンガローに泊まっていたときのこと。スタッフ達とすっかりトモダチ状態になっていた私は、なにかにつけて、旅行者は立入禁止であるハズのレストランのキッチンや冷蔵庫をわがもの顔で使わせていただいた。スタッフと一緒に魚突きをすれば、獲物を三枚におろし、半身を刺身に、半身をバーベキューにするという作業の全工程をキッチンでやらせていただいた。刺身は日本人用、焼きものはスタッフ用。この場合彼らとシェアするのが原則。また、お腹を壊してしまったときは、友人が持っていたそうめんを茄でて食べた。これもおすそわけ。この場合、和食をふるまうという格好にもなったので、かえって喜ばれたりもした。